第12章 『すき』『きらい』
「ぇ」
頭上から聞こえた、くぐもった声。
どう頑張っても、謝罪の意図が理解出来ない。
「透に、なんか言われた?」
「………っ」
「そろそろ仕掛けてくる頃かなっては思ってたんだけど」
「斗真?」
頭をぎゅ、って抱く斗真の腕から抜け出して。
急に明るくなった視界に目を細めながらも、まっすぐ斗真を見上げた。
「この前の、同級生に襲われたのも透がどーせ絡んでんだろ?」
「…………ぇ」
「だから、『悪かった』」
「なん、で?」
「………『俺』が、來を気に入ってるから」
唐突に耳に響いた言葉に目をいっそう見開けば。
照れたようにそっぽを向いた斗真が視界にうつりこんだのを最後に、急に視界は暗転した。
斗真の掌が、視界を奪ったのだ。
「いいから」
両手で掌を退けようと手を伸ばすけど。
斗真の声に静止された両手のひらは、行き場をなくしてただだらん、と、ベッドへと投げたされた。
「…………と、ま?」
「たぶんけっこうはじめから、あいつは気付いてたんだよ。だから、『噛んだ』んだ」
ぇ。
「透は、俺だから」
「?」
「同じ感覚、共有してるから」
ますます意味がわからない。
閉ざされた視界の中、瞬きを二度三度、繰り返した。
「まぁ、いーや」
彼の掌に覆われた視界。
表情を見ることは叶わないけど、なんとなく、笑ってるような気がした。
笑う、とゆーより、嘲笑う、的な。
「お前は?」
「ぇ」
このタイミングで、外された掌。
急に明るくなった視界に一瞬目がかすむ。
「來は、どーしたい?」
やっと慣れてきた視界にうつりこんだのは、まっすぐあたしを見据える斗真の眼差し。
「………ごめん、言ってる意味がよくわかんない」
「なんで?簡単なことだろ」
「簡単なんかじゃないよ」
「なんで?」
だってそれは。
それを答えても、いいの?
「YESか、No、それだけだ」
「…………っ」