第10章 すれ違い
「残念、不正解ってこと」
「………なら、なんで」
「親族だからよ」
「ぇ」
「あたしが、親族だから」
「ぇ、でも……」
『ただの玩具が…』、って。
「あたしがふたりと出会ったのは4年前。あなたと同じ頃ね、ふたりと『付き合って』た」
「ぇ」
「付き合ってた、って、あたしは思ってた。だけどね、あのふたりの目的はあたしじゃなくて、『海莉』。」
かいり。
また、その名前。
「あたしの、妹。あのふたりの、妹よ。」
「………ぇ」
「海莉はね、4年前事故にあって、以来ずっと、目を覚まさないわ」
_______ぇ。
「その時よ、あの子からあのじじぃに移植されたのは」
「………」
なん……。
何、それ。
「気を付けなさい。あの場にあたしを呼んだのは、『透』よ」
「ぇ」
「あたしを見た時のあなたの目、嫉妬、したんでしょう?どーだった?透は優しかった?」
『痛いんだ』
『ライちゃん』
「海莉からもらうもん貰ったら、あたしはお払い箱。他の男とヤったあたしを、斗真は許さなかった。その場ですぐに、ポイされたわ。代わりに海莉の入院費用は全部、出してくれてるけどね」
「………」
『他の男と』……?
「さっきのキスもね、あたしが見てるの、気付いたからしたのよ」
「………」
「あたしがあなたに何を話すか、全部これも透の計算なのよ」
透の優しさは、裏がある。
わかってた。
十分わかってた、はずなのに。
「はは……っ」
駄目だ。
自分の馬鹿さ加減に呆れちゃう。
これはもう、笑うしかないでしょ。
「あのふたりの目的はたぶん、別にあるわ」