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愛玩彼女

第10章 すれ違い


なんだろう。
最近透の態度が、おかしい。
やけに絡んでくるし。
そーいえば家でも、ここのところ毎晩、透はあたしに触れる。


『ふたりでしてもつまらない』


確かそう。
そんなこと、言ってたはずなのに。
なんだろう。
何かが、おかしい気がする。






ジャー




水洗トイレウォシュレットを流して、個室のドアを開ければ。


「………」



怖い顔した、ひとりの女性。
そう。
確か。


あいり、さん。





「気をつけた方がいいわよ」
「?」


す、と。
手洗い場へと横を通りすぎた瞬間に。
聞こえたのは確かに彼女の声。


「透はね、自分のいたいところにしかいない。自分が望まない場所にはいない男よ」
「………はい?」
「あの男はね、自分の書いた筋書き通りにしか動かない。そのためにまわりの人間をとことん利用するんだから」

「………」


「勘違いしない方が身のためよ。あいつが興味あるのはあなたじゃない」


挑発。
あんたなんか相手にされてない。
そう、いいたいんだ、この人。


「あのふたりとあなたじゃ、世界が違うもの。わかりあえっこないわ」



無表情で、彼女に背を向けた瞬間。
勝ち誇ったように自嘲する、彼女の声に勝手に両足は動きを止めた。



「………どーいう、意味ですか?」
「そのまんまの意味よ」
「『移植』、のこと?」


低く呟いた言葉に、表情を変えたのは彼女の番だ。
だけど。
聞きたい。
この人なら、知ってる。
たぶん、あたしの知らないこと。



知ってる。




「じゃぁ教えてください。あなたとの関係。ふたりとあなたが、あたしと同じ立場にあったのはわかる。だけどそれだけじゃ、ないんでしょう?」
「ええ」
「………兄妹、とか」

「………」


沈黙。
やっぱり、正解?
同じ世界、は、そーゆーこと?


「はずれ」


「ぇ」



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