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愛玩彼女

第10章 すれ違い


かくして。
お見舞いにいくたびになぜか『帰れ』しか言われなくなって、早10日。
さすがに我慢の限界とやらも佳境を迎えた今日この頃。
我ながら10日もよくもったなぁ、とか。
褒めてあげたい。


ところだけど。



他人の病室で、しかもオペ後ぐっすりと眠りこけている(わけではないんだけど)双子の片割れと。
本能の赴くままにあんなことをしちゃった負いも、あるわけで。
なかなか強気に出られないのも、また事実なのだ。




「また行くの?懲りないなぁ、ライちゃんも」
「うるさい。なんで透はよくてあたしが駄目なのか理由に納得するまで行くもん」
「ハイハイ」



斗真の代わりに学校まで迎えに来てくれるよーになった透と、こうして病院に直行するのも。
ここ最近日課になりつつもある。


ついでに。


「帰れ」


特別室の扉を開けた瞬間のこれも。






「またぁ?なんなの、なんで透はよくてあたしは駄目なわけ!!」
「なら透も帰れ」
「それめちゃとばっちり」
「なんで連れてくんだよ、お前も!」
「来たいってゆーんだもん。こんなに愛されちゃってんのに斗真ってば冷たいね」

両手広げて首を竦める透を、鋭い瞳で一睨みするのは、もちろん斗真で。
そんな斗真に、「降参」とでもいいたげに。
両手を上げて透はため息をついた。


「わかったよ、帰ろうライちゃん」
「嫌だ」
「來」

「………」

そんなに睨んだって、引き下がらないんだから。


「俺の言葉がわかんねぇなら、契約は白紙だ」
「ぇ」
「斗真」
「飼い主のゆーこと聞けねぇバカ犬はいらねぇ」

「………っ」


「斗真、いい方」

「うるせぇっっ!!」



ビクンっっ



低く唸るような大声、に。
無意識に体は防御の構えをとる。


「あ……」


ふたりよりも一瞬遅れて、我に返れば。
驚くでもなく、ふたりのまっすぐな視線が、そこにはあった。
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