第10章 すれ違い
下着を脱がせることもなく。
服はきちんと、その形を保ったまま。
奥行きの乏しいこの上でのそれは、快楽よりも先に、苦しさを、連れてきた。
「と、る」
ギュ、と、透の首へと手を伸ばせば。
彼はそのまま、膝裏へと両手をかけて。
「つかまってて?」
そのままあたしごと、持ち上げたのだ。
「ひ、ぁァァッッ!!」
必然的に、さらに深く突き刺さる、ふたりの繋がり。
「……っ、きっつ。ライちゃん、力抜いて、これじゃ動けない」
ギュー、って。
透の首へとしがみつきながら首を左右に振るので精一杯。
「………」
ふー、って。
ため息ついて。
「そのまま掴まってて。動くよ?」
「や……っ!!だめっ」
トン、て。
背中がドアへとくっついた。
瞬間。
「!!」
透は下からいっそう激しくあたしを突き上げたんだ。
駄目。
これ、気持ち良すぎて。
理性、持ってかれちゃう。
声が漏れないように噛みしめた唇も、いつまで持つか怪しい。
すぐにでもみっともなく喘いで、このまま快楽に溺れそうだ。
「ふッッ、ぅんんっ、ん、は…っ」
「斗真寝てるし、大丈夫だよ」
「ぃや……っ、前、も、そーいってだま、した、も…っ」
「覚えてた?」
参ったなー。
なんていいながら、ストン、と片足だけが床へと下ろされると。
くるりと反転した、視界。
目の前にいたはずの透が、今目の前にあるのはドアの白い色。
「なくしてあげる、その理性」
「えっ……」
「ライちゃん後ろ、好きだもんね?」
「何……っ、ひぁ、ああぁんんっ」
突然再開された抜き差しに、片方だけ外された下着の紐によって露になったそのぐずぐずの突起へと宛がわれた指先。
「ひ、あ、あ、ああッッ!!」
弱いところばかり、確実に突いてくる。
ギリギリまで引き抜かれたと思えば、躊躇なく奥を抉り。
かと思えば浅いところを小刻みに突いてくるのだ。
種類の違う刺激に、頭はもう、ショート寸前。
ううん。
たぶんもう、壊れてる。