第10章 すれ違い
ガタンッッ
浴室のドアが閉じるよりも先に。
もつれ込むままに壁へと体は追いやられ、吸い付くようにふたつの唇はくっついた。
特別室、って、ドラマなんかでみるあれ。
どっかの応接間かと錯覚しちゃうくらいの立派な広さに、高そうなソファー、テーブル。
奥には立派なトイレに、浴室まで備え付け。
こーいっちゃなんだけど、お母さんも個室に入院中ですが、広さも作りも全然違う。
トイレだけしかないし。
それでも入院費、1日1万以上だよ。
ここだといったいいくらかかるんだろう。
とかとか、余計なこと実は考えてる余裕なんて微塵もないんだけど。
なんか適当なこと、考えてないと飲み込まれそうで。
自分の理性、なくなっちゃいそうで。
怖い。
「ライ、舌だして。もっと」
浴室に備え付けられた豪華な洗面台。
いつの間にかそこに腰掛ける形になって、透との距離はいつも以上に近い。
「……っん」
透のキスは。
口の中全部が性感帯にでもなったかと錯覚するくらい、擦られた中が熱い。
時折舌へと吸い付いたり、歯を立てたり。
歯列をなぞられれば、それだけで下腹部がキュンと絞まるのが自覚できるんだ。
「……まだ、キスしかしてないよ?」
「…ふぁ……っ」
どちらのものかわからない唾液で濡れた唇を、透の親指がなぞっていく。
名残惜しさを感じて、親指に舌を伸ばせば。
くすりと笑いながら透は人差し指と中指をあたしの口の中へと押し込んだ。
「とー、る」
「エロいね、その顔」
「!!」
指先をあたしへと差し出しながら、流れ出た涙を唇が拭っていく。
意識がそちらに集中する中、いきなり『それ』は、あたしを一気に奥の奥まで貫いたのだ。
「〰️〰️〰️〰️〰️ッッ!!」