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愛玩彼女

第10章 すれ違い


「行こう」
「?」
「病院、行くつもりなんでしょ透」
「一緒に行くの?」
「………いかない理由なんてあるの?」


「そうだね」





行っても手術中。
だけど斗真の目が開くときは、あたしがそばにいたい。
あたしと透が、そばにいて手を握ってたい。
理由なんてこれだけで充分だよ。














「………透っっ!!」




病院の、控え室。
扉を開けるなり血相を変えていきなりだきついたのは。
もちろん、あたしじゃない。


「………愛莉?」


よっぽど予想外の人物だったのか、それとも行動が予想を越えたのか。
どっちにしろ、いつも表情を崩さない透にしては珍しく。
その顔に浮かべたのは驚きの表情。
と。
動揺。
確かにその目にうつった色はそれだ。


あいり。

そう、呼んだ。


あたしよりもいくらか年上。
化粧品の匂いに、ほんのりと香るのは香水の匂い。
多分、彼女自身のものじゃない、誰かの残り香。
こんなに色濃く残る残り香は、きっとすぐに透にもわかるはず。


「なんでここにいるの?」
「なんでって、当たり前じゃないっ!!斗真は恩人だもの」
「……ああ、そっか。海莉ちゃんは?」
「まだ、入院中」
「そっか」


「………」


なんだろう。
嫌な空気。
このふたりは、何かを『共有』してる。
あたしにはない、何かをたぶん、共有してる。





「ライちゃん、座ろっか」
「あ、うん」

「透」

「ありがとう、もういいよ。あとは俺たちがついてるから」
「でも……」
「斗真も同じ」
「ぇ」
「斗真もたぶん、目が覚めたら会いたいと思うのはキミじゃないと思う」


冷酷にそう、言い放つと、透は彼女に背中を向けてあたしの肩をそっと、抱いた。


「どーせその女もただの玩具でしょ!?あたしたちの世界なんてどーせ理解できないわ!」
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