第10章 すれ違い
あれ。
ん?
「と、ーっ、まっ、起きてたのっ?」
「寝てるそばでうるせーよ」
「だってとーる、起きないって!!」
「お前さ、いい加減透信じるのやめろって。学習しろよ」
「え、えぇ?」
「ライちゃん、ほんとかわいいね。いじりがいあるよほんとキミ。」
「はぁ〰️?」
「薬飲ませたの、斗真だよ」
「え、嘘」
「早く気付け、バーカ」
「早く慣れなよ、いい加減」
「えぇ〰️?」
朝から頭パニックかも。
だって寝てたよね、熟睡だったよね?
「あー、だる、ガッコサボる」
「あ、ならあたしもー」
「ライちゃんはだーめ」
「なんで」
「お前この前のテスト、なんだよあれ。点ちゃんと取ってこいよ」
「いくらかわいくてもおバカには世の中冷たいんだよ?」
「………身を持って体験中かも」
「せめて俺たちが教えてあげたくなるくらいまでは点数取ってきなよ」
「バイトしてねーじゃん、今」
『今』は、ね。
入学早々バイトばっかで、気付けば先生の日本語が全然理解出来なくなってたんだもん。
頼りのまきちゃんは、ガッコ来てないし。
「………」
『あれ』から。
まきちゃん、全然見てない。
「ねぇ」
「………」
隣で寝たフリ貫くつもりの大男の背中へと話かければ。
わざとらしい沈黙が返ってきた。
そんなの、負けないもん。
「まきちゃんに、なんかした?」
「………」
「してないよね?」
「…………」
「斗真」
「犯されたくなきゃ早くガッコ行けよ」
威圧感、半端ないんですよね、この方。
だけど。
あたしだってそんなの、負けないんだから。
「………あたしの、友達なんだけど」
「知らねーし」
「ライちゃん、遅刻」
やんわりと入ってきた透の仲裁。
もう一度斗真へと視線を落とせば。
その背中はすでにあたしを寄せ付けないオーラでいっぱいで。
ため息ひとつ、透と一緒に部屋を出た。