第8章 『お仕置き』
「ふ、んんぅ」
もう、何がなんだか正直よくわかんなくて。
ただただ与えられるその快感に酔いしれた。
気持ちよくて。
全然よく、わかんなくて。
甘ったるい声はさっきから止まんないし。
透なのか斗真なのか、正直キスされても認識できないくらいには。
たぶんもうとっくに、ふたりに墜ちてたんだと思う。
まきちゃんに触れられた時の嫌悪感も、背筋が凍るようなゾワゾワも、ない。
むしろ逆。
触れて欲しい。
もっと、触れたい。
もっともっと、溺れたい。
「気持ちよかった?」
「…………ぅん」
いつもいつも、情事が終わると襲い来る恐ろしいくらいの倦怠感。
今日はいつもの非なんかじゃ、なくて。
投げ出されたまま、指先1本、動かない。
「だから言ったんだよ、『気をつけて』、って」
髪の毛を優しく撫でながら、意味深に言葉を繋ぐ透へと、なんとか顔だけ動かす。
「効果絶大でしょ?斗真めちゃキレてたねぇ?」
「透?」
斗真同様、すぐにでもくっつきたそうな瞼を一気に覚醒させたのは、悪魔のような透の一言。
「ほんと、面白いの見れた」
「………」
「昨日飲ませたでしょ?あれね、キミの事が好きなコにだけ、感じる匂いなんだよ。絶対ひとりやふたりはライちゃんをひそかに思ってるコいると思ったんだよね」
駄目だ。
突っ込みたいのにいろいろ無理。
喘ぎっぱなしで声帯つぶれたし。
疲れすぎて思考回路も回らない。
「俺も斗真、好きなんだよね。覚悟しなよね?ライ」
「………」
駄目だ。
瞼がやっぱり、重い。
なんか言わなきゃいけない気がするけど。
「ゆっくりお休み、ライちゃん」
優しく頭を撫で付けるそのぬくもりには、さすがに勝つ自信、ないや。