第7章 崩れた関係性
「………っ」
な、んで。
「っか、誰、おっさん」
「ガキがいきがってんじゃねぇよ、ボケ」
「……っで!!」
まきちゃんの胸ぐらを鷲掴んで、あたしの上から引きずり下ろすと。
躊躇なく斗真はまきちゃんを壁へと投げ捨てた。
途端に響くのは、人が硬い何かにぶつかった時に鳴らす、鈍い音。
「!!……まきちゃんっっ」
「ぃって、バカ力」
項垂れながら首を左右に振るまきちゃんを見て、知らずに漏れた安堵のため息。
そしてそれは同時に、斗真の怒りを買った。
「まき、って、お前?」
「は?」
「來の話に良く出てくんの、お前なわけ」
「だったら何」
「まきちゃんまきちゃんゆーから、マジ騙されたわ」
「……と、ま」
「來」
「……っ、はいっ」
「帰るぞ」
「……でもまきちゃん、さっき……」
壁にぶつかった時、変な音しなかった?
骨、折れたんじゃ……。
「文句あんの、お前」
向けられた視線が鋭すぎて。
固まったまま、なんにも言葉が出てこない。
怖い……。
こんな、斗真、初めて、で。
「來」
「まきちゃ…」
「帰んなよ。じゃなきゃ俺、まじ殺されかねないし」
「………」
「大丈夫、どこも怪我してないって。だいたい、あんな酷いことしたやつの心配なんかすんなよ、あんた」
「まき、ちゃ…」
「來っ」
「はいっ」
反射的に、背筋がピンと伸びる。
「帰るぞ」
チラリと座り込んだまま動かないまきちゃんへと視線を向ければ。
視線は背けたままに、右手だけをヒラヒラと振っていた。
「……ごめん、ね」