第7章 崩れた関係性
確かにすごいよ。
チョコレートの高さなんて、あたしと同じくらいあるし。
ビスケットやマシュマロなんて庶民的なものじゃなくて、銀色に光るお皿の上にはパンやフルーツがたくさん乗っている。
それにウェハースや、フォンデュだろうか、細長いビスケット。
ワッフルまである。
たくさんの甘い匂いに、全神経が持ってかれちゃう。
「おねーちゃんっ、一緒に食べようっ」
ぐいぐいと裾を引っ張られる形で、フォンデュの前まで来ると。
天がワッフルをあたしに渡してくれた。
「ありがとう」
「美味しいよ?」
「うん、いい匂い」
チョコレートをたっぷり付けて。
口の中へと一口で放り込めば。
「おいしいーっ」
幸せ。
止まんないわ、これ。
テレビでしかこんなの見たことないよ。
普通に家の中で出来るんだね、チョコレートフォンデュ。
すごいなぁ。
うん。
すごいよ絶対。
「付いてる」
口の端についたチョコレートを指ですくい、それを躊躇なく口へと持っていく斗真の行動に。
さすがにいち早く雷斗が反応した。
隣で、無言で真っ赤になる弟を見て、初めて事の重大さに気付いても遅いかもしれない。
つられて赤面したあたしと、いたって平静にそこにいる斗真を交互に見比べて。
雷斗はなぜか、同情するようにあたしの肩を叩いたのだ。
「………報われねぇな、姉貴」
勝手に変な誤解をしたらしい彼は、そうさとすように言葉を残すと。
さっさとキャっキャっやってる兄妹のところへと戻っていった。
「……っぶは…っ」
対角線上で、一連のやり取りを見ていた斗真はひとり、大爆笑。
いやいや、笑ってる場合じゃなくない?
バレなくて良かったけどさ。
あたしなんかたぶん、気の毒に誤解されたよね?
斗真のあれは、挨拶的な?
それなのに真っ赤に照れたように反応したあたしも悪いんだけどさ!
絶対違う。
あたし、斗真のことはなんとも思ってないからね!