第7章 崩れた関係性
「見てみておねーちゃんっ、チョコレートフォンデュだよ!!」
そう。
あれはまだ日も浅い2週間前のこと。
みかたちを置いて帰った(わけではないんだけど)あたしに、兄妹たちは当たり前だが激怒した。
船から女の子が落ちた、とかなんとか騒がしかった中、おねーちゃんがいない!と我が家の兄妹たちは兄妹たちで慌ただしかったのだ。
斗真が怪我したから病院に行っていた、ことになってたあたしに兄妹たちは、あたしを見るなり泣き出すし、怒り出すし。
まぁそれも、逆の立場なら気持ちもわかるし。
現に斗真がいなかったらあたしもしかしたら死んでたかも。
考えれば考えるほどにホラーすぎて、考えるのを止めたけど。
とにかく。
我が家では誕生日ケーキを買う余裕なんてなかったから、誕生日には鍋にチョコレートを溶かしてチョコレートフォンデュもどきをよくやっていた。
つまり我が家にとってはこのチョコレートフォンデュは特別な意味があるわけで。
心配かけたお詫びに今日、チョコレートフォンデュを やることには確かになってた。
なってた、から。
学校帰りにスーパー行ってチョコレートとお菓子もちゃんと買ってきた。
そう、買ってきたの。
だから、スーパーの袋下げながら「ただいまー」なんてリビング開けた瞬間、目の前の光景に一瞬、いや数分、固まった。
ついでに落とした袋に入れておいた卵の存在に気付いた瞬間、我に返ったけど。
「…………何、これ」
「チョコレートフォンデュっつったら、これだろ」
「いや、そーじゃなくて!」
「みかが今日やるっつってたから、用意させた」
「……」
何か問題か?とでも言いたげに自信満々に瞳を強く揺らすのは、間違いなく斗真だろう。
いや、今は双子のどっちかとかは別に関係なくて!
「おねーちゃん、美味しいよ!チョコレートが流れてるの!固まらないの!すごーい」