第7章 ワンコ系男子。
黄瀬くんはなにやら自分のカバンを漁りはじめた。
「ねぇねぇ、如月さん、こっち見て!」
私は黄瀬くんの方を見た。
「っぶ、何、その髪型。」
私は思わず笑ってしまった。
黄瀬くんは髪ゴムで前髪をくくっていた。
「ちょっと後ろは短くて結べないっスけど…今日から俺は黄瀬涼太じゃなくて、黄瀬涼子っス!よろしくね!」
「なにそれ、意味わかんない。」
わけがわからず思わず笑ってしまった。
「男じゃなくなれば、俺と友達になってくれるんスよね?」
黄瀬くんは今まで見た事ないぐらい
嬉しそうに笑った。
「一回だけ、ファンレターくれたっスよね?多分山田さんに無理矢理書かさせられたんだろうけど…嬉かったんス。」
「…?」
「大体、モデルとしての俺へ向けたメッセージが書いてあるんス。けど、如月さんのメッセージは…俺の事、一人の男の子として書いてあるようで嬉しかったんス。」
黄瀬くんの悲しげな表情に
目を奪われた。
「でも、そのメッセージはきっと俺のためじゃなくて、山田さんのためだったんス。友情のため。舞い上がってバカみたいっスよね?」
「…ち、違うよ。…確かに芽衣子に書けって言われて書いたのには違いないけど…でも、あの手紙に書いたのは本当で…。」
黄瀬くんは私をじっと見つめる。
「すごいなって…思うの。あんなに人に囲まれても嫌な顔一つせずに笑顔で…バスケだって…上手なのに人一倍頑張ってて…黄瀬くんの事は本当に尊敬してる…。」
「…ありがとうっス。」
それから私たちは黙々と
資料を仕上げた。
21時を過ぎた頃、
やっと完成し、私たちは帰ることにした。