第7章 ワンコ系男子。
「如月さんってさ、クソ真面目っスよね。」
「…。」
「ちょ、シカトっスか!?超傷つくんスけどー!」
「冷やかしに来たんなら帰ってください。」
私は黄瀬くんを睨みつけた。
「…悪かったっス。」
「…。」
何に対する謝罪なのか、
黄瀬くんは丁寧に頭を下げた。
「ずっと、不思議でたまらなかったんス。俺の追っかけってマナー悪い子多いのに、如月さんって…すっごい良い子だから…。」
「…?」
「ちゃんと見てるんスよ。試合会場とか体育館とかでファンの子達が散らしてったゴミ拾ってる所とか…俺の事好きでもないくせにちゃんと試合応援してくれてたりとか…。」
黄瀬くんは方眼紙に書かれた下書きを
きれいになぞっていく。
「だから、なんでそんな人があんな連中とつるんでるんだろぉーって…。もしかして、本当に俺の事好きなのかなって期待してたんスけど…まさかの嫌われてるっていう…。」
黄瀬くんは悲しげに笑った。
「だから、なんか悔しかったんス。いたずらしたくなったんス…それがこんな結果になって…本当に悪かったっス…。」
資料はさっきよりずっとずっと
早く仕上がっていく。
「別に嫌いではないです…。ただ男の人が苦手なだけです。」
「…へ?」
黄瀬くんは驚いたような顔をしていた。
「私、黄瀬くんの事嫌いとは言ってないです…。」
「…そういう事っスか。」
黄瀬くんは静かに笑った。