第7章 ワンコ系男子。
「うわぁ~。ひどいやられっぷりっスね。女子って怖っ!」
黄瀬くんはそう言って私にハンカチを差し出した。
私はその手をはじいた。
「満足しましたか?」
私のその問いに
黄瀬くんはニヤリと笑った。
「どうスかね?…これに懲りたら付き合う連中考えた方がいいっスよ。」
「…っ!!!!」
私は涙が出そうなのを堪えながら
黄瀬くんをにらみつけた。
黄瀬くんは私の目の前に座り込んだ。
そして、私の頭をハンカチで拭き始めた。
「や、やめてくださいっ!!」
私が黄瀬くんの手を掴むと、
黄瀬くんはその私の手を掴み、再び拭きはじめた。
「別に同情とかじゃないっスよ。まさかここまでされるとは俺も思ってなかったスから。せめてもの罪滅ぼしっス。」
耐え切れず、
涙が溢れた。
「…あー、悪かったっス。やりすぎたっス。…ジャージとか持ってきてるスか?」
黄瀬くんの問いに私は首を振った。
「ほら、ちょっとでかいかもだけど、これ貸すから着替えて。風邪ひくから。」
そう言って黄瀬くんはジャージを貸してくれた。
「…いいです。」
私はそのジャージを受け取らなかった。
「そういう強がりいいっスから。俺のせいで風邪ひかれたら嫌なだけだし…じゃ、俺帰るっス。」
黄瀬くんは私の隣にジャージを置いて
帰って行った。
わけがわからなかった。
ひどい事したと思ったら
優しくして…
あの男が何をしたいのかが…。
結局、私はびしょ濡れのまま
家に帰った。