第7章 ワンコ系男子。
「お疲れっス。忘れ物っスか?」
黄瀬くんは相変わらず笑顔で私に話しかけてきた。
「うん…じゃぁ。」
私はすぐに目をそらし、
その場を去ろうとした。
"グイ"
「きゃ!?」
強く腕を引っ張られ、
私は転倒した。
「あ、ごめん、つい力入れすぎちゃった。」
黄瀬くんはニヤニヤと笑った。
私はこの顔を知っている。
私にいたずらをしてきた"男"の顔だ。
私は一気に青ざめた。
黄瀬くんは私の顔を覗き込んだ。
「ねぇ、如月さんってさ、俺の事好きなんスか?」
その的外れな質問に思わずポカーンとしてしまった。
「…へ?」
「俺の追っかけしてるんスもんね。じゃぁ、好きなんスよね。じゃぁ、仮にこういう事されても…嫌じゃないんスよね。」
黄瀬くんは私の上に馬乗りになった。
「や、やめて…よ。」
私は、黄瀬くんから目をそらした。
「え?何でっスか?いいじゃないスか。好きなんでしょ?俺の事…。」
黄瀬くんは私の首筋を指でなぞった。
背中にぞっと寒気が走り、
嫌悪感が全身を駆け巡った。
「やめてってば!!!!」
"ガッ"
私は思いっきり黄瀬くんを突き飛ばした。
「…いってぇ。ちょ、いきなりマジ低抗すんのやめてほしいんスけど!」
黄瀬くんは驚いたような顔で私を見ていた。
「私、黄瀬くんの事なんか全然好きじゃない!!!!」
私がそう大声で言うと、
黄瀬くんはしばらくポカーンとしていたが、
突然笑いはじめた。