第7章 ワンコ系男子。
休み時間になっても、
相変わらず、黄瀬くんの周りの女子たちで溢れかえっていた。
それにも関わらず、
黄瀬くんは笑顔で彼女達に接していた。
…芸能人って大変だなぁ。
そんなことを考えていると、
芽衣子が私の方へ歩み寄ってきた。
「ねぇ!凛!一緒に黄瀬くんの追っかけやろうよ!」
芽衣子は嬉しそうに私を誘った。
「えぇ!?嫌だよ。私、男の子苦手だし…興味ないし…。」
私がそう呟くと、
芽衣子は不満げに口を尖らせた。
「いいじゃーん!私についてくるだけでいいからさっ!一人じゃ心細いじゃん!?」
芽衣子は『お願いっ!』と、
私に頭を下げた。
「…わかった…。芽衣子についていくだけね。」
「やったぁー♪」
こうして、私の黄瀬涼太追っかけ生活は始まった。
黄瀬くんの出ている雑誌はすべてチェックさせられ、
黄瀬くんのバスケの練習から試合まで全て応援に行き、
芽衣子が黄瀬くんに話しかけるときは、
必ず連れて行かれ、二人の横でただぼーっとしていた。
「ねぇ!凛!この間の黄瀬くんのインタビュー見た!?黄瀬くんってワンコ系男子らしいよぉ~♪超カワイイ!」
芽衣子は玉子焼きを頬張りながら
嬉しそうに話していた。
「あぁ…なんか…犬っぽいかもね。すっごい良い人だし…疲れないのかなぁ、あんな女子に囲まれて…。それでもニコニコ笑顔で対応してさぁー」
私は窓の外をぼーと眺めながらそう呟いた。
「もうっ!ほんっとに性格いいよねぇ!しかもカッコイイしぃー!あぁー!もうっ幸せっ!」
芽衣子は聞く耳持たずで
勝手に一人でペラペラと黄瀬くんの事を話していた。
ふと、黄瀬くんの方を向いた。
「…!」
黄瀬くんと目があった。
黄瀬くんはニコっと笑い私に会釈した。
私も会釈し返すと、すぐに再び目をそらした。
どんなに性格が良くても、
どんなに素敵でも、
結局彼は"男"なのだ。