第6章 青春ギター少年。
「…My First Kiss…?」
笠松は小さい声で確かにそう言った。
というか、そう口が動いた。
思わず演奏を止めた。
「よくわかったね。好きなの?ハイスタ。」
私がそう聞くと、笠松は頷いた。
「そうなんだ。あたしも好きなんだ。」
そう言って私は笑った。
すると、笠松はギターを弾き始めた。
驚いた。
思った以上にギターが上手だった。
下手すりゃ西山よりずっとずっと上手かもしれない。
私も続けてベースで曲に入った。
そして、彼は小さな声で歌っていた。
ギターとベースの音に負けて全く聞こえないが
確かに口が動いていた。
「おい、笠松。」
私がベースを止めて、
名前を呼ぶと、
笠松ははじめて私と目を合わせた。
「な、ななななんだ!///」
私は笠松の前にスタンドマイクを立て、
マイクをアンプに繋いだ。
「歌ってみてよ。」
私がそういうと、笠松はうつむいて顔を真っ赤にした。
「歌えって!命令っ!」
私は笠松の顔をむぎゅっと掴んで、
顔をこちらに向けさせ、少し顔を近づけた。
「っな////わ、わかった!う、歌うから…は、離してくれ////」
笠松は真っ赤になって、
手をバタつかせた。
なんだか面白くて、可愛かった。
今度またしようと心に決めた。
そうして、笠松のギターが入り、
私も続いてベースで入った。
笠松のボーカルが入った。
歌はそんなに上手くはない。
でも、なんだかとっても気持ちがこもっていて
聞いてて胸が熱くなった。