第6章 青春ギター少年。
私は部室のドアを開けた。
部室の中では意外な人物が
アンプにヘッドフォンをつなぎ、
ギターを弾いていた。
バスケ部キャプテン、
笠松幸男だった。
いや、正確には…
元キャプテンと言うべきか…?
この間のでかいバスケの大会で
惜しいところで敗退した とかで、
彼はそれを最後に引退したそうだ。
私はしばらく彼の音色に耳を傾けていた。
すると、
彼はやっと私の存在に気がついた。
「あ…あ、いや、す、すまん!」
笠松は慌ててヘッドフォンをはずし、
ギターを弾くのをやめて何故か私に謝った。
「…別にいいよ。けどそれ、西山のギターっしょ?」
そう、笠松が弾いていたギターは
私のバンドメンバーでもある西山のギターだった。
「あぁ、えっと…弦の張り替え頼まれて…」
笠松は思ったよりもそもそ喋る奴だった。
男子の前ではもっとガツガツ体育会系に話していた気がしたが…。
それにしても西山は自分の楽器を他人に任せるのか…。
私はなんだかそれに頭に来た。
「あ?あいつ自分で弦替えしないのかよ。サイテーだな。」
私は思わずムスっとしてしまった。
「いや…その、俺が頼んだんだ。もうバスケも引退しちまったし…暇で」
そう言って笠松は目も合わさずに挙動不審にそう言った。
「ふぅーん…。」
私は適当に返事をすると、
自分のベースを軽くチューニングし、
練習している曲を弾き始めた。