第3章 ヲタク男子。
「うるせぇ!俺は如月に頼んでるんだから、お前らはすっこんでろ!ほら、如月。どっか行こうぜ。」
そう言って宮地くんは私を引っ張って行った。
「あ、あの…」
私は引っ張られるままに連れて行かれた。
女子たちの刺すような視線が痛かった。
そうして、私と宮地くんは屋上へと来た。
「よっしゃ、ここだったら練習できんな!」
宮地くんはニコっと笑った。
「あの…どうして私に頼むんですか?他にも…可愛い人とかいっぱい居ますよ…?」
私はうつむいてそう言った。
「んー…そうだなぁ…。お前がりんりんに似てるからかな?」
「っへ!?に、似てますか!?」
私は思わず驚いた。
「おう、見た目は似てないけど、中身とか…すごい似てるんだ。」
そう言って宮地くんは笑った。
「中身…ですか?」
「そう!りんりんもさ、お前みたいに見えない所で結構頑張ってるんだよ。」
「・・・見えないところ?」
「そう。例えばダンスの時、誰かがポジション間違えてて、ズレた時とか、きちんと誘導して戻してあげたりとか…。他のメンバーの話とか真面目に聞いて後ろの方でリアクションしてたりとか…」
「・・・。」
「とにかく、別にりんりんがしなくてもいいような事をあの子はやってるんだ。それに、ダンスだってすごく上手くなった。あれは絶対にすごい努力をしたに違いない。」
そう言ってアイドルである"私"を語る宮地くんは生き生きとしてて、なんだか、私は嬉しいような恥ずかしいような不思議な感覚だった。
「…あ、でも私、そんなに頑張ってませんよ。」
私がそう言うと、宮地くんは首を振った。
「ばか、ちゃんと見てるよ。お前毎日日直がサボってる花の水換えとか黒板の掃除とかやってるだろ?」
「・・・あ。」
誰にも見られてないと思っていたのに
この人は見ててくれたんだ。
なんだか少しだけ嬉しくなった。