第2章 楓。
「え…?」
記憶がなくなる…?
「私が恋した男の子はすごくダジャレが得意で、面白くて、優しくて…彼と過ごした時間はとっても幸せだった。ずっとずっと続けばいいのにって…そう思ってた。」
「忘れたくなくなってしまったの。彼と過ごした時間を。だから、手術するのを断ったの。そしたら、病気が悪化しちゃってね…私ね、もう手術するか、死んじゃうかなの…。」
彼女は泣いていた。
「忘れたくない。死にたくない。ただ、伊月くんとずっと一緒に居たいだけなの…私、欲張りかな?」
そう言って彼女は弱弱しく笑った。
たまらなくなって、
俺は彼女を強く強く抱きしめた。
びっくりするぐらい彼女は細かった。
「恋なんてやっぱりしなきゃ良かった。そしたらこんな思いしなくてすんだのに…ごめんね。ごめんね。」
そう言って彼女は泣いていた。
そして彼女も俺を強く強く抱きしめてくれた。
「例え、あなたが俺の事を何度忘れても何度だって俺はあなたに恋をさせます。約束します。だから…」
情けないが、俺は泣いてしまって上手く喋れなかった。
『手術してください。』
そう言うと、
彼女は頷き、そして、俺を真っ直ぐ見つめた。
「伊月くん。大好きだよ。きっと忘れない。」
「はい。」
俺が返事をすると
小さい彼女は必死に背伸びをして
俺にキスをした。