第2章 楓。
それから、彼女に会えないまま
どれくらいが過ぎただろうか…?
俺は高校2年にあがり、
木吉も無事退院した。
病院に行くこともなくなっていた。
でも、彼女の事を忘れたことはなかった。
『ドライブスルーこちらから☆』
ピカピカと光る看板を目にして、
俺はふらっと病院のあのベンチへと向かった。
「あ…。」
思わず足が止まった。
ベンチにはあの懐かしい後ろ姿があった。
話しかけたい。
でも、怖くてたまらなかった。
きっと、彼女はもう俺を覚えていないから。
俺はあえて、彼女の隣のベンチに腰掛けた。
そして、あの時のように呟いてみた。
「ドライブスルーまでドライブするー?」
「…っふふふ。」
あの時のように彼女は必死で笑いを堪えようとしていた。
俺はベンチから立ち上がり、彼女の横に座った。
「どうですか?俺の最高傑作!」
俺がそういうと彼女はあの時のようにクシャっと笑った。
「すっごい面白いです!他には?」
「えーっと…」
俺はあの時のように彼女に渾身のダジャレを披露した。
彼女はあの時のように笑ったり、
感心したり、いろいろな反応を見せた。
全てがあの時に戻ったようだった。
でも、一つだけ違った。
「なんだか、私あなたに会った事がある気がするんです。あなたと居るととても心地が良くて…幸せな気分になれるんです…不思議ですね。」
彼女はそう言った。
「不思議ですね。俺もです。」
こうして、また俺は彼女に恋をさせるために
ネタをつくり続ける。
何度だって、何度だって
俺は彼女に恋をさせる。
=FIN=