第2章 楓。
それから、
彼女はいつものベンチには来てくれなくなった。
嫌われてしまったのだろうか…?
モヤモヤとしたものが心に残り、
気持ち悪くてたまらなかった。
新しく彼女に披露したくて急いで作ったダジャレも
改めて見返すと駄作でしかなかった。
「なぁ、木吉…。」
「ん?どうした伊月?」
「会いたいのに、会えないんだ。どうしたらいいと思う?」
俺がそう聞くと、木吉は考え出した。
「…それは…なぞなぞか何かか?」
木吉は真顔でそう聞いた。
「なぞなぞ…かもな。」
俺がそういうと木吉は笑った。
「簡単だ!会いに行けばいいんだ!」
「…そうだな。」
俺は小さく笑った。
俺は彼女の事が好きだったのに、
彼女の事をなにも知らなかった。
会いに行くにも部屋さえしらなくて、
名前すら知らなかった。
彼女がどんな病気かすらも知らない。
彼女に会えないまま
2ヶ月が過ぎた。
風景はすっかり鮮やかな紅葉から
真っ白な雪景色へと変わっていた。