第2章 楓。
話してみると、
彼女は俺より3歳も上だった。
小さく華奢な彼女をずっと年下と思い込んでいた。
ずっとこの病院に入院しているそうだ。
何の病気か聞いても彼女は笑うだけで教えてはくれなかった。
でも、本人いわく『治る病気』らしい。
だから、俺は特に気にも留めていなかった。
ただただ、彼女と会って
話せればそれでよかった。
気がつけばこの時から俺は、
彼女に恋をしていたのかもしれない。
新しいネタを思いつけば、
すぐに彼女に披露しなければ!と彼女の事を考え。
バスケをしていても
『バスケの試合を見てみたい!』と言った彼女の事を思い出していた。
もっともっと彼女を知りたくて、
もっともっと彼女と一緒に居たかった。
俺は、彼女にこの思いを告げた。
「あの、急なんですけど…」
「ん?何?何?新作!?」
彼女はワクワクとした目で俺を見た。
「いや、そうじゃなくて…」
俺が真面目な顔して彼女を見つめると
彼女も真面目な顔をしてこちらを見た。
「好きなんです。付き合ってもらえませんか?」
俺がそう言うと彼女は困ったように笑った。
「ありがとう。嬉しいっ!でも、ダメだよ。」
彼女はそう言ってうつむいた。
「え!?なんで…ですか?」
俺が彼女の顔を覗き込むと、
彼女は顔を上げ、少し寂しげに笑った。
「私はね、恋をしちゃいけないの。恋をしたら病気が治らなくなっちゃうんだよ。」
その時の彼女の顔は
とても寂しげで、なんとも言えないけれど
胸がぎゅっと痛んだ。
「…。」
冗談だと思う。
そんな病気聞いたことないわけで…。
でも、それから俺は何も言えなかった。