第10章 しんでれらがーる☆
放課後、帰る準備をしていると、
高尾くんが私の目の前に現れた。
「あ!ねぇ、さっきの小説の話、聞かせてよ!」
高尾くんはニコニコとしながら私の前に立った。
「あ…えと、恋愛小説なんです。」
そう言って私は笑った。
「へぇー!面白い?」
高尾くんはじっと私の目を見つめる。
「はい。シンデレラストーリーみたいなお話で…」
「シンデレラストーリー?」
高尾くんは眉間にシワを寄せて首をかしげた。
「名もない女性が成功を掴む物語のことなのだよ。」
高尾くんの後ろからズイっと緑間くんが顔を出した。
「うわぁ!?真ちゃん居たの!?」
高尾くんは驚いたようだった。
「その小説、俺も気になってたのだよ。よかったら読み終わったら貸してほしいのだよ。」
緑間くんは私をじっと見つめた。
「…え?あ、は、はい!」
あんなに無愛想な緑間くんが話しかけてくる
まさかの展開に、
私は思わず硬直してしまった。
私がそう返事をすると、
緑間くんは満足気に笑った。
「えー!俺が先に凛ちゃんに聞いたんだけどー。」
高尾くんが不満気に口を尖らせた。
「五月蝿いのだよ。それよりさっさと体育館に向かわなければ遅刻するのだよ。」
緑間くんは時計を指差しながら高尾くんを見つめた。
「うわ!?やべぇ!…じゃ!凛ちゃん!また明日ね!」
そう言って高尾くんと緑間くんは
二人で走り去って行った。
"また明日ね"
その一言が
すごく嬉しかった。