第1章 前編
数少ない情報を辿り、私は西の都に足を踏み入れていた。
聞いていた通り大きな街だ。……この街のどこかに金色の戦士がいる。
修行を積んでいくうちに、私にはいつの間にか相手の強さがなんとなくわかるようになっていた。
だから、きっと彼に会ったらすぐにわかるはずだ。
私はキョロキョロしながら復興しつつある街を歩いていた。
と、
「おね~さんっ♪ 今一人? オレ今超暇なんだけど、どっか二人で遊びにいかない?」
柄の悪い男が一人、柄悪く話しかけてきた。
外見が悪いなら、せめて話し方くらい真面目にすればいいのにと思いつつ、私はとりあえず無視することに決めた。
「ねぇねぇ、聞いてる? オレさいい店知ってんだ」
「…………」
「あれぇ? 無視しちゃうの? 酷いなぁ」
「…………」
「ねぇねぇ、ねぇったら」
「……うざい」
ぼそっと言った瞬間、男の雰囲気が豹変した。
「なんだとぉ!? もう一回言ってみろ!」
「あれ、聞えなかった? じゃあもう一回言ってあげる。ウ・ザ・イ」
わざわざ足を止め思いっきり笑顔で言ってあげると、男の顔が真っ赤に染まった。
そして私に向かって拳を振り上げる。
「ちょっと可愛いからって調子に乗んなよな!!」
だがその男の拳は空を切る。
腰を屈め男の懐に入り込んだ私はそのまま男の腹に重い拳を打ち込んだ。
「ぐぇ!」
潰れた蛙のような声を出し、男は腹を抱えながら地面に突っ伏した。
「ふん、女だからって甘く見るんじゃないよ」
途端。
「カッコいい~!!」
「お姉さん強いねぇ!!」
いつの間にか湧いていたギャラリーから拍手されてしまった。
そういう雰囲気がどうも苦手な私は居心地が悪く、引きつった愛想笑いを浮かべながらそそくさとその場を立ち去った。
――私は強い。そういう自信があった。
なんせ人造人間を倒すためにずっと修行をつんできたのだ。
あんなちゃらい男に負けるわけが無い。
と、私はその場で立ち止まった。
そしてそのままうずくまる。
さっきの一戦で知らず傷を負っていた……わけでは断じてない。
「お腹減った……」