第3章 後編
「トランクスが、金色の、戦士……?」
「黙っていてすみません」
まさか、あの優しくて一見弱そうな彼が金色の戦士だなんて……。
でも目の前にいるのは確かにあの「金色の戦士」だ。
驚きはすぐに悦びへと変わる。
私の目標が、目の前に居る。
この人を倒せば――、
「止めて、トランクス!」
「大丈夫ですよ、母さん」
不敵に微笑む彼を見てカッとなる。
彼の殺気を振り払うように私は声を上げ、その場を蹴った。
「はああああああああ!!」
「!!」
突っ込んだ勢いでもって彼の鳩尾に拳を叩き込む……はずがもうそこに彼はいなかった。
「っ!?」
「こっちですよ」
背後からの声に振り返りざま第二打をお見舞いする。
だがその拳は彼の固い手のひらに難なく収まってしまった。
ただそれだけなのに私の腕の方が痺れる。
「くっ、」
後ろに飛び退った私をグリーンの瞳が静かに見つめていた。
その目はなぜか哀しみに満ちていた。
でも、そんなこと今はどうでもいい。
(やっぱり、強い)
敵わない……?
脳裏に浮かんだその言葉をムリヤリ打ち消し、私はもう一度彼に向かっていく。
「もうやめなさい!!」
ブルマさんの声が聞こえた気がした。
「やああああああっ!!」
今まで鍛え抜いてきた最高の拳と蹴りを繰り返しぶつけていく。
だがその全てを彼はいとも簡単に交わしていく。
(なんで……、何で当たらないの!?)
これまでずっと一人で修行してきた。
人造人間と戦うため、家族の仇を討つため、何もかも捨てて――。
それが、何の意味がなかったっていうの……?
人造人間がいなくなって、ずっと探してきた金色の戦士とこうして闘っているのに、私の心は満たされない。
それどころか、
「うわあああああああああああ!!」
……いつの間にか、私は涙を流しながら彼に向かって行っていた。