第1章 チョコレートに繋がれた
何蒸し返してんのコイツ。せっかく忘れて落ち着いてたのに、バカなの?という気持ちを存分に込めた目で見やると、上鳴はちょっとたじろいだ。
けれどめげない上鳴電気。
「いや、だってよ……水無瀬がコイバナとか、珍しいし気になるじゃん」
なんで諦めないのよ。っていうか珍しいってなんなのよ。あたしが女子らしくないとでも言いたいわけ?
捲し立ててやろうと思ったけど、なんだか気疲れしてしまってため息を落とすだけに留めた。
その代わり、何か返す言葉を探す。
「……コイバナとか、そんなんじゃないよ」
やばい、思ったより声が沈んだ。でもほんと、そんなんじゃないの。だってあたしも耳郎ちゃんも、女の子だもん。恋愛って、そういうのじゃないんでしょ? みんなそうだもん。
考えてたら、なんだかホントに悲しくなってきた。あたし、耳郎ちゃんのこと好きになっちゃいけないのかなぁ。
つい今しがたの思考と矛盾するけど、なんだかもう、頭の中がぐちゃぐちゃしてきた。
「ちょ、おい水無瀬、なんで泣いて……~~ッ!?」
「!」
どっくん、みたいな、なんだかすごい衝撃があった、気がする。隣の上鳴の方で。
え、なに、なにが起きたの? 彼が焦ったような顔でこっちを見たと思ったら、急に目を見開いて、バタンと倒れた。比喩じゃない。そのまま、地に伏している。
「上鳴、アンタ、なにイザナのこと泣かせてんの」
声が降ってくる。あたしの好きな、声。いつもより低いそれが、足元に転がった上鳴を責め立てた。
もしかしてそれって、あたしのため?なんて、ちょっとだけ自惚れそうになってしまう。
「ち、ちげーよ、俺なんもしてな……」
「アンタしかいないでしょ!」
「ぎゃ!」
もういっかい、どっくん。あ、これ、耳郎ちゃんの必殺技だ。さっきの衝撃の正体に気付き、納得する。