第1章 チョコレートに繋がれた
「い、いきますっ!」
条件反射だった。即答。なんならちょっと食い気味に頷く。
女子同士で部屋にお呼ばれなんて普通のことなんだけど……あぁ、もう、ダメだ。これやっぱ好きでしょ、あたし。耳郎ちゃんのこと。
だって他の人に、こんな風にならない。ときめかないし、些細なことで嬉しいとか悲しいとかならないし。
ついでに言うなら、これしきのことで耳まで熱かったりしたこともなければ可愛い顔にきゅんきゅんしたりすることだってない。
耳郎ちゃん、だけだ。
「…………」
「イザナ?」
どしたの、と不思議そうな声を頭のてっぺんに受けながら、あたしはその場に屈んでみた。そして瀕死の上鳴に一言。
「ね、やっぱりカッコイイでしょ?」
「えっ」
本人に聞こえないように小さく囁いて、にっこり。それからは返事を待たず、また勢いよく立ち上がった。
「いこっ、耳郎ちゃん!」
今のあたし、満面の笑みなんだろうなぁ、なんて思いながらも、にやける口許を抑えきれない。
なんだかびっくりした様子の耳郎ちゃんをひっぱって、あたしは女子寮のエレベーターへ駆け出した。
いったい今まで何に悩んでたんだろうっていうくらい急に吹っ切れて、自分でも驚くほど元気になった気がする。
認めちゃえば簡単なんだなぁ、なんてしみじみ納得しながら、もういっそ二人きりだし告白しちゃおうか、なんてひとりで笑ってみる。
「ねぇイザナ、どうしたのってば!」
「あのね耳郎ちゃん、あたしね……」
ふたりっきりの小さな箱へ彼女を押し込み、後ろ手に扉を閉めるボタンを押しながら、彼女の耳にそーっと唇を寄せる。
「あたし、耳郎ちゃんが好きよ」
生温い視線と誰かの絶叫が遮断されたのを確認してそう告げたら、今度は耳郎ちゃんが、とっても驚いた声をあげた。
さっきよりも赤く染まってまるでりんごみたいな彼女からは、あたしが欲しかった答えが……返ってきたどうかは、あたしたち二人だけの秘密、ってことで。
自分の部屋とは違う階でエレベーターを降りて、それから先はとっても幸せな時間が待ってたのは、言うまでもありませんでした。
~HAPPY END♡~