第9章 王の射手
平穏な馬車の旅は、出発から1時間足らずで、危険なものに変わってしまった。
「後方150m!巨大な飛行物体が接近中!魔物だと思います!」
カゲヤマの一声で。
「カゲヤマは引き続き警戒!攻撃の素振りを見せたら迎え討て!コヅメはカゲヤマの援護を頼む」
「はい!」「ん」
イワイズミさんの指示に、カゲヤマとケンマは返事をすると、窓から馬車の屋根に上る。
俺は窓から顔を出して後方を見たが、魔物らしいものは見当たらない。走り抜ける風に髪を弄ばせていたら、アオネさんに首根っこを掴まれて馬車に引き戻された。
「対象目視!片翼が破れたワイバーンです!」
イワイズミさんが俺とアオネさんを振り返って言った。
「王都のアイツだ。狙いは十中八九、ヒナタだろうな」
「嘘だろ!?」
俺が驚いて声を上げると、アオネさんは毛布で俺を完封した。
「なんでっ!!」
動こうとすると全身が痺れる。ロープで縛られたのか、もがくのも制限される。
「クッソー!!」
毛布の中で声を上げると、イワイズミさんの声が返ってきた。
「アオネ、ヒナタまで包む必要はない。剣だけでいい」
すると、毛布が剥がされた。
アオネさんは俺の剣を、鞘に入れた状態で毛布に包み直した。
「それでいい。それから、ヒナタ」
イワイズミさんが俺を見る。
「カゲヤマの闘いを見てみろ。王の御成だ」
……?