第13章 再会
「アオネさん!?」
「ダメ」
驚く俺にアオネさんは冷静な目を向けてくる。
イズミンはどこか安堵したような顔をしたが、すぐに顔が引き締まるとゆっくり荷台を引き始めた。
「イズミン待って!」
「手伝っちゃダメ」
アオネさんは俺の腕を離そうとしない。
「なんで! 親友が苦しんでるんだよ! ほっとけない!」
「彼がどうなってもいいのか!」
アオネさんの大声に俺は思わず口をつぐんだ。
イズミンはまだ全然進んでいない。歩いても全然追いつく距離にいる。
アオネさんは静かに教えてくれた。
「貧民街にいる子供達はみんな働きに出される。与えられた仕事を放棄したり部外者に手伝わせたりしたら、給料は減らされ鞭打ちにあう。食料は配給されないから自分で買うしか無いが、それを買えば給料は全部消える。月一回の給料日にしか、子供達はちゃんとした食べ物を食べられないんだ。でも、食べれていない子の方が多い。親がまともに働いて無かったり、居なかったりするからな」
俺はイズミンを見る。荷台の足元から覗く小さな足。俺と同い年なのに、身長は当時のままで体重は激減している。
自分より何倍も大きくて重い荷台を引いているのに、毎日まともに食事ができていない。
俺だって冒険の中で辛い事苦しい事を、たくさん経験して来たよ。でもそれ以上に今のイズミンが痛々しくて、悲しくて。
俺は両手を握りしめた。
何もできない自分が恥ずかしい。親友1人救えずに、魔王を倒すなんて言えない。
烏野村の幸せな日々が、どれだけ贅沢なものだったかを思い知らされる。
俺はイズミンに向かって一歩を踏み出すが、アオネさんに引っ張られて歩けない。今、きっとひどい顔をしているだろう。泣くのを我慢している、情けない顔だ。
アオネさんが腕だけでなく肩も掴んで制止する。
俺は何もできずに、イズミンを見送った。