第12章 治療と強化と邂逅
それぞれ用事を済ませ、店を出ようと出入り口を振り返った時、5人組の新しい客が入店してきた。
俺が彼らの顔を見る前に、防具の棚の裏へ引き摺り込まれた。
「ん?! んん!!?」
イワイズミさんに口を塞がれて抱えられている。横でカゲヤマもアオネさんに俺と同じことをされていた。
俺はイワイズミさんの手をペシペシ叩いて、口から手を退けてもらうと、声を潜めて聞く。口を塞がれたということは、騒ぐなということだろうから。
「何するんですか!」
「すまん。今ここで奴らに顔を覚えられたら困るから、ついな」
イワイズミさんの言う「奴ら」とは、例の5人組のことだろう。各々高そうな鎧と武器を持っている。
「あいつらは魔族をこの世の悪とする宗教の騎士団だ。教団の中でも特に強い信仰を持って集まった武力集団・白鳥沢騎士団って言えばわかるか?」
「ごめんなさい。わからないです」
イワイズミさんがせっかく説明してくれたのに、俺には聞き覚えのない名前だった。
「そうか。烏野村は王都に近いが、教団に目をつけられるような事件が無かったのが幸いしたな」
教団に目をつけられるような事件……と言うことは、魔族関係の事件ってこと? スガさんたちの言っていたシミズさんの事件は、魔族が関係してないってこと? じゃあ、タナカさんとニシノヤさんは……。
俺が逡巡しているうちに白鳥沢騎士団の皆さんは帰っていった。一瞬、赤髪の人がこっちを見た気がするけど、まあ気のせいだろう。この棚の防具を見たんだと思う。
俺たちは棚の陰からそろそろと出て、騎士団の歩いて行った方向と逆の道でシェルターに帰った。
その時はもう、雲の切れ間から日が出ていた。