第12章 治療と強化と邂逅
「上級魔法の痺れ取り」を終えた俺は、ベッドに突っ伏して思う存分寝た。
……はずなのに、目覚めた時は翌日の朝。
気分的には3日間くらい寝てそうだったのに、たったの8時間しか寝ていないことになる。
くっそー。なんか損した気分。
実際は損なんてしてない、むしろ早く回復できて喜ぶべきなんだ。
でも、なんだろ、気分と現実が一致しないこの不快感。
(あー! むしゃくしゃするー!)
俺は近くに立てかけていた勇者の剣を手に取り、廊下に出る。
「うお」
「うあ!」
廊下に出てすぐ目の前。カゲヤマがそこにいた。
「お前、出歩いて平気なのかよ」
カゲヤマがそんなこと言った。服装は白いシャツに黒いズボンというラフな格好。弓の弦が当たるとかで長袖はあまり好んで着ない。弓と矢は背負っている。
「舐めるなよ! 俺は魔王を倒すんだ! こんなことでへこたれるタマじゃねえ!」
想像以上に前向きな言葉がスラスラ出てきた。
前まではうまく言えなかったのに。
「悪いが、魔王を倒すのは俺だ。俺がこの世界を変える」
カゲヤマは相変わらず、揺るぎない口調で言い切る。
「じゃあどっちが先に倒すか競争だ!」
「競争? ……臨むところだ」
俺の提案をカゲヤマは不敵な笑顔で応えた。
「盛り上がってるところ悪いが……」
おずおずとイワイズミさんが言いながら寄ってきた。こっちもラフな格好で腰には剣がある。
「今から街に買い出しに行くんだが、ヒナタ、お前も行くか? 因みに、アオネとコヅメは行くぞ」
「行きます!」
俺が即答するとイワイズミは頷いた。次にカゲヤマを見る。
「お前はどうする?」
「……行きます」
「決まりだな」