第10章 工業の街
コンコンッ
突然、部屋の扉がノックされた。ケンマが売店に行ってからそんなに時間は経ってない、はず。
「はーい!」
とりあえず返事を返すのは礼儀だ。
コンコンコンッ
まだノックしてくる。
「いますよー?」
コンコンコンコンッ
なんか、……不気味だ。
俺がもう1度声をかけようとしたら、扉の向こうの気配が変わった。
ドンドンドンドンドンドンドンドンッ!
「っ!?」
軽快な音はどこへやら、凄まじい勢いで扉を叩いてくる。
ドアノブがガチャガチャと動き出し、衝撃で扉が小刻みに揺れてる。そのうち取れそうで怖い。
「誰だよお前!!」
俺は思わず叫んだ。
すると急に、しん……、と場が静まり返る。
それも束の間。
カリカリカリ……
次は扉を引っ掻く音が聞こえてきた。
そして、
「……けて、……あけて」
消え入りそうな声が聞こえてくる。
幼い女の子の声だ。
ケンマに絶対扉は開けるなって言われてるし、そもそも動けないから何もできない。
「ごめん、俺今動けないから開けられない。用があるなら自分で開けて?」
ガチャッ