第2章 〜独り占め〜(律)
「律くん?入っていい?」
「…どうぞ」
私はいつもの通り お邪魔します と一言いってから律くんの部屋に入り,コーヒーが乗ったお盆を机の上に置いた。
「律くん,コーヒー飲む?」
「うん…ありがと」
そう言って律くんと机を挟んで向かい合わせに座り,一緒に私が淹れたコーヒーを飲んだ。
「ねぇ,今回は何点?」
「…65点」
「あ,前より上がった!」
そんなふうにはしゃいでしまった私を,律くんは,は?という顔で見る。
「喜ぶとこ,そこ?」
「だって前より上がったし…ふふっ」
「…何?」
「嬉しかったから!それと,前にもこんな会話したなぁって思って,懐かしくなって」
私と律くんが恋人になる前に,何度か律くんの部屋に来て,私が淹れたコーヒーを飲んでもらったときにも似たような会話をした。その頃を思い出すと懐かしくなる。
すると,律くんも少し懐かしいような声を出した。
「ああ…確かにね。少し前にあった」
「あの時は律くん優しくなかったもんね。どうやったら上手く話せるかなって苦労したもん」
「…仕方ないでしょ」
たわいない話をしていたら,私はふとあることに気が付き,律くんに問いかけた。
「律くん,なんか言いたいことある?」
「は?」
「いや,なんか雰囲気がいつもより焦ってるっていうか…なんか気まずそうっていうか…」
「……」
律くんはそれっきり黙ってしまった。
気まずい空気が流れ,居たたまれなくなった私は, 新しいコーヒー淹れてくるね と言って部屋を出ようと思った。けど,
「待って」
という律くんの一言に引き留められた。
なんで引き留めたのか分からず,私は律くんに問い掛けた。
「なに…?」
「あのさ,俺がなんか言いたそうにしてた理由なんだけど…」
「え…?うん」
「今日,宗詩達と出掛けたでしょ?」
「宗ちゃん達と?うん,出掛けたよ?それが何かあった?」
宗ちゃん達と出掛けたら何か悪かったのだろうか。それとも今日は何かの記念日だったのだろうか?考えても私の中で答えは出ない。このままでは埒が明かないと思っていたら,律くんが意外な事を言った。