第10章 フラグ回収フラグ折り(跡部/仁王/観月)
あれ?こんな上着ってあったっけ?
まぁいいかと、とりあえずヨタヨタしながら外に出て様子を伺う。
幸い近くには誰もいないようだ。
さっきの水道場では跡部達とこの格好で鉢合わせになる可能性があるので、更衣室裏の小さい蛇口が1つある場所に移動する。
ジャブジャブと水で洗っていると、ふと手元に影ができた。
「それだけでは、ジュースのシミは落ちませんよ」
やば、さっそく見られた!
勢いよく振り向くと、後ろには観月が腕を組んで立っていた。
観月「ンフッ、先程はどうも、馬のレディー」
めいこ「え?!何で分かっ??」
観月「丁度氷帝を視察中でしてね、遠目から一部始終はだいたい見ました」
めいこ「へぇ?!」
観月はまたカバンから何かを取り出す。
それは、手の平サイズの洗濯用洗剤のボトルだった。
観月「ちょっと服を貸していただけますか」
めいこ「え?はい」
言われるままに服を差し出す。
蛇口の前でしゃがみ込むと、慣れた手付きで服を洗い始めた。
めいこも横にしゃがんで手元を観察する。
観月「さて、今度こそお名前を教えてもらいましょうか」
めいこ「へ?えっと、和栗めいこ...です」
観月「和栗さん、ですか。学年は?」
めいこ「2年です」
観月「そうですか、ならあなたは後輩ですね。僕は3年なので」
めいこ「あ、じゃあ、観月、先輩?」
観月「おや、僕をご存知でしたか?」
めいこ「いえ、さっき頂いたものに名前が...」
観月「あぁ、なんだ」
少し声のトーンが低くなったのが気になった。
もしかして2面性をお持ちなんですかね。
観月「気分はどうです?」
めいこ「うーん、今は薬がきいててちょっとボーッとします」
観月「なら控室で横になっていてもいいんですよ、後で持っていきますから」
めいこ「いえー、大丈夫です、ここ日陰で涼しいし、ちょっとの間なら」
観月「そうですか」
しばらくして、観月は服の両端を持ってパンパンと引っ張った。
観月「さて、だいたい汚れは落ちましたよ」
めいこ「わぁ!真っ白だすごーい!ありがとうございます!」
めいこは小さくパチパチと手を叩いた。