第10章 フラグ回収フラグ折り(跡部/仁王/観月)
めいこ「えーーー!」
残念そうな顔をしためいこに、1言付け足す。
跡部「楽になったら出てくればいい。じゃあ俺は戻るぞ」
めいこ「あ、えっと!」
跡部はドアノブを回しかけて、手を止めた。
跡部「何だ」
めいこ「あの、試合、かっこう...よかった、です」
本人に率直な気持ちをのべるのは少し恥ずかしい。
でも何か伝えなきゃと、下を向きながらしどろもどろ言うと、跡部は少し驚いた顔をした。
跡部「サンキュ」
それからフッと笑って、テニスコートへ戻っていった。
めいこ「っっっだはぁーー!」
跡部が見えなくなると大きく息を吐いた。
実はドキドキし過ぎてさっきから上手く息ができていなかったのだ。
そのままバタリとベンチに仰向けで倒れると、顔を手で覆いながらジタバタした。
え、まって、ちょっとまって、あれはちゅー?
ぶちょーが、ちゅー?!なんで?!挨拶?!
え、あれが?!
でも前もホッペとオデコにしたときも挨拶みたいなもんだろ的なこと言ってたし、え?
今のはそういう感じでいいの?!えええええ!
ぶちょーなれてるかもしんないけどでもあたしファーストキスだったんですけどぉお!
もっとこう、もっとこうドラマチックにムード満点の両思いでするもんちゃうんですか!
不意打ちでアッサリ一瞬過ぎてはじめ分かんなかったじゃんよぉおお!
バタバタし過ぎたため、膝上に置いてあった薬箱がコツっと床に落ちた。
ハッと我に返っためいこが慌てて拾おうとすると、何やら箱の隙間から黄色い紙が飛び出している。
めいこ「ん?」
薬の説明書きに黄色の紙のものなんてあっただろうかと、もう一度開けると、それはどうやら隙間から差し込んだらしい、細く畳まれた付箋が出てきた。
めいこ「なんじゃこれは、気づかなかった」
広げてみると、走り書きで「ピヨッ」という文字と、アカウントアドレス。
めいこ「仁王さんか...」
ぶちょーといい、仁王さんといい、今どきベタなメッセージカード。
意外と似たとこあったりするのだろうか。
うーん、でもガラケーだからこのメッセージアプリ入らないんだよねー。
どうしよー。
ぼーっとしていると、甘い匂いが漂ってくる。
一体どこから..。
めいこ「ってあたしかぁ!」