第8章 我らがエリザベート(滝/数多)
足を振り上げかけたところで、赤茶髪の人が慌てて防御体制に入った。
きっとすごく痛い必殺技に違いない。
佐伯「ほら、ダメじゃんこんなところで油売ってたら。もう直ぐ試合だよ」
今度は爽やかイケメンが歩いてきた。
すれ違う女子の目がハートになっている!
佐伯「おや?フフフ、なんだいこの子は、フフフフッ」
めいこをみて少し驚くと、その人は笑いだした。
黒羽「いや、初対面だ。ダビデが勝手に絡みだしただけ」
天根「ぬ...」
佐伯「なるほど?でも見たところ、ここで試合してる学校生徒でも無さそうだね」
いえ!氷帝学園に在席しております!
ということを、首を振った後で跡部のインサイトのポーズを真似てみた。
黒羽「...何言ってんだ?」
佐伯「うーんと、生徒ではあるけど顔は隠してますってことかな?」
ちがーう!いやまぁ確かにお面のことは合ってるけど!
佐伯「あ、そうそう、さっき自販機で飲み物買ったら当たりが出たんだけど、よかったらどうぞ」
受け取ったものは炭酸ジュースのポンタ。
これで飲み物2本目...でも断る理由もないので、会釈してありがたく受け取った。
佐伯「じゃあね、可愛いお馬さん」
黒羽「じゃーなー」
佐伯達はニコニコと手を振ると、奥のコートへ歩いていった。
可愛いお馬さんて何?!
どこら辺がかわいいと思ったの?!
あ、この馬のつぶらな瞳?!
お面をペタペタ触っていると、ブツブツと何か言っている少年とすれ違った。
どうしよう、コレ被ってるせいで何言ってるかマジ分かんなかったけど、愚痴っぽいっていうのは分かった!
軽く凹む!
はぁ、もうそろそろ帰ろう、いい加減暑すぎるし...。
下を向いてトボトボとコート沿いを歩いていると、誰かとぶつかった。
「おっと」
慌てて顔を上げると、笑顔の滝がみえた。
滝「お帰り、案外早かったね」
いつの間にかコート全体を一周して戻ってきていたらしい。
知り合いに会えて安心したのか、何故か嬉し涙が出てきた。
めいこ「滝さぁああん!」
勢い余って抱きついてしまった。
滝「えちょっとどうしたのさ」
三脚のビデオカメラを微調整していた滝は、驚いて一度手を離した。
滝「どうしたの?なんかあった?...って物増えてない?」