第8章 我らがエリザベート(滝/数多)
大会選手じゃないのかなぁ?
観月「馬なんか被っていたところで、そんなに呆けていたら偵察も何も...」
顎に手を当てながら、めいこを上から下まで観察する。
観月「ってあなたもしかして女性ですか?!しかも肘にドロが付いているじゃないですか、あぁもう!」
カバンから小さなブラシを出すと、めいこの肘に付いた土を払い始めた。
観月「まったく、そんなもの被っているから転ぶんですよ、怪我でもしたらどうするんです、仮にも女性なんですから」
転んだというか、撃たれたフリなんだけど...とりあえず黙っていよう。
観月「はい、できましたよ」
めいこはペコリと会釈した。
観月「あなた、お名前は?」
めいこ「....」
観月「何ですか、喋れない縛りもしているんですか?はぁ、もう分かりました、このブラシは差し上げます」
めいこはプルプルと首を振ってブラシを突き出した。
観月「いいんですよ、もう土がついて汚れてしまいましたから」
めいこはしょぼんと視線を落として、ブラシを見つめた。
観月「気にしないでください。またあなたが転んだときにでも使えばいいでしょう、それでは」
天パウェーブの少年はメモ帳とペンを手早くしまうと、軽く会釈して足早に去って行ってしまった。
またまたもらっちゃったよ。
ブラシの裏には、マジックで「観月はじめ」と、綺麗な字で書かれていた。
観月さんっていうんだ。
後でぶちょーに知り合いかどうか聞いてみよう。
その頃の跡部部長は、めいこを気にして時計をみていた。
先程ヘアバンド少年からもらった凍らせたペットボトルが少し溶けてきたので、馬の口からではなく、首下からイリュージョンして飲んでみた。
天根「馬が上手いこと飲んでる...プッ」
黒羽「こらダビデェ!お前初対面の奴につまんねーダジャレ飛ばすな!」
天根「べプッ!」
赤茶っぽい髪の人が何か言ったかと思うと、突然隣の黒髪ツンツンな人に脇腹を肘鉄されて軽く横に吹っ飛んだ。
めいこはオロオロしながら、飛んだ人に駆け寄る。
天根「積もり積もったいつも通りのつもり..プッ」
よくわかんないけど大丈夫そうなのは分かった。
黒羽「もう1発食らっとくか?」
天根「ちょ、バネさんそれはタンマ」