第1章 脳天気マネージャー(跡部)
数秒の沈黙のあと、跡部の「なぁ」とめいこの「あのっ」の声が重なった。
跡部「なんだ」
めいこ「あ、えっと、部活戻らなくていいんですか?」
跡部「この雨じゃ外出たら危ねーだろ。落ち着くまではここで待機だ」
めいこ「はい...あ、じゃあ次どうぞ」
跡部「いや、お前とこんな風に話したのは初めてだと思ってよ..」
そこでめいこはハタと気がついた。
そうだ今ぶちょーと2人っきりだ!!今更気づいた!!どうしよう!!
意識した途端にとんでもなくドキドキしてきたが、別に好きなわけじゃない。
これはあれだ、吊橋効果的なあれなのだ。
まともに話したことないし皆に大人気のイケメン先輩だから緊張しているのだ。
と、自分に言い聞かせ、
「ちょっととりあえず洗濯物干してきます!!」とベンチから立ち上がる。
乾燥機に入れられるもの以外は、ひとまず室内干しするしかないが、物干し竿は外に置いたままだ。
乾燥機を回しながらどうしたものかと考える。
めいこ「何かロープ...ロープっぽいもの...」
ブツブツ言いながら日品棚をあさる。
跡部「おい、コレが終わったら使っていいか」
振り返ると、洗濯機の上で回っている乾燥機を指さしていた。
めいこ「えっ!まさか今着てるの入れようとしてます?!」
跡部「...」
めいこ「縮むか痛むかすると思うんでやめた方が...」
跡部「そうか...」
めいこ「確か棚の上段に予備のシャツが..あったあった。Lサイズしかないんですけど、新品なんでとりあえずコレ着てください」
跡部「あぁ、ありがとよ」
先にシャツだけ渡し、またロープっぽいものを探しに戻る。
跡部は着替えたらしく、後ろで布の擦れる音がした。
めいこ「あ、これでいっか!」
棚の外に積まれたソレに気がつき、エアコンを挟んだカーテンレール上と上をせっせと紐で繋げていく。
跡部「っておい!それネットだろーが!!」
めいこ「ファッ?!でもこれすごい技で破けちゃったやつですよ?!」
跡部「...ならしかたねーか...」←技を開発中に破った人
テニスネットに洗濯物をかけていくたびに、上下にはずんだ。
めいこ「あたし、ぶちょーのことあんま知らないですけど、もっと冷たくて怖い人かと思ってました」