第6章 振り回される(日吉/跡部)
めいこ「ぶちょー!一瞬コンビニ寄ってもいいですか?」
ビシッと手を上げて発言する。
跡部「あん?かまわねーが」
めいこ「じゃあ暑いので店内で待っててくださーい!」
そう言って目当てのものを探すために駆け込む。
目当てのものはお菓子コーナーで直ぐに見つかった。
ブタブタ麺。
小さな小さな駄菓子のカップラーメンだ。
一昨日、跡部が食べてみたいと言っていたので、自分用のとで2つ買った。
日吉君は、どうしよう。確かお煎餅が好きなんだったっけ?
自分オススメの、醤油煎餅を1枚買った。
会計をしながらチラリと出入り口を見れば、店外で何やら話している2人。
あれ、暑いのに入らなかったんだ。
もしかしてトイレだと思って気を利かせてくれた?
ちょっと照れてしまったが、せっかくなのでトイレも借りていくことにした。
それは入口右の突き当りにあり、店内よりも少しだけ薄暗い。
女性用トイレのドアを開けると、便座の他に鏡と手洗い場が設けてあった。
何気なくみた鏡には、左下に白い手が....
「ーーっ!!!!!!!」
言葉にならず息をヒュっと吸い込むと、速く、でも静かにドアを閉めて一目散に出口に向かって走った。
めいこ「ひよしひよしひよし!!!」
背を向けていた日吉に向かって思い切り抱きつく。
というより、背負っていたテニスバックに抱きついていた。
彼は不意打ちの衝撃に少しよろめく。
日吉「おわっ!何だてめぇは!」
めいこ「だってだって!!」
跡部「おいどうした」
慌てて走ってきた涙目になりながらのめいこに、ただ事じゃないと察した跡部は、ピリっとした空気を漂わす。
めいこ「トイレ!トイレに!!」
それだけ聞いた跡部は、すごい血相で店内に入っていった。
日吉「落ち着け、トイレがどうした」
テニスバックからめいこの腕を掴んで離すと、安心させるように肩を抱いて跡部の後を追った。
跡部は、男性用と女性用のトイレのドアを開ける。
跡部「あん?誰もいねーじゃねーか、逃げたか?」
めいこ「でも鏡に白い手があ!」
跡部「はぁ?!」
トイレで痴漢や変質者にでもあったのかと早とちりした跡部は、素っ頓狂な声を上げた。
日吉「ホントか?!」
その瞬間、日吉は顔を輝かせた。