第6章 振り回される(日吉/跡部)
めいこが読んでいる本は丁度クライマックスのところで、どうしても続きが気になって持ってきたものだった。
夢中になっていると、駅につく前にあっという間に読み終えてしまった。
本を閉じて余韻を楽しむように、ホウッと遠くを見つめる。
めいこ「はぁ...すごかった...読み終わっちゃった」
日吉「なら俺の本でもどうだ?」
そう言って、今読んでいた本を渡してくる。
めいこ「え!いいよいいよ」
日吉「俺は何度も読んでるから構わねーよ。それより、お前がどんな本が好みなのか気になる」
めいこ「え、あ、えーっと、じゃあお借りします」
日吉「ん」
お互いの本を交換すると、また静かな読書タイムが始まった。
確かに、日吉の本は角が少し折れたりしていて、かなり読み込んでいるようだ。
どうやらこの小説は、寝台列車が舞台の話らしい。
今丁度電車に乗ってるから、何だか感情移入しやすいかも。
主人公は女性。
__車窓から夜景を眺めていると、ヒタリと白い手が窓に張り付いた。不思議に思って。。。__
めいこはパーンッ!と勢いよく本を閉じた。
日吉「どうした」
めいこ「コレ怖いやつじゃん!」
日吉「あぁ、一応ホラー小説だからな」
めいこ「言ってよぉ!」
日吉「怖いの駄目なのか?」
めいこ「そうですよ!」
日吉「けどこれは謎解きが面白い話だからな。ホラーは2の次だ」
めいこ「だとしても十分怖いよ!シチュエーション的にうっかり感情移入しちゃった!」
日吉「あぁ、俺は近いシチュエーションの小説を選んで持ってくるからな。その方が怖さが増すだろ」
めいこ「増し過ぎた。昼間なのが救い」
日吉「その幽霊はな、反射するものがあれば何処にでも出r...」
めいこ「ワーワーアーナニモキコエナイー」
耳を畳んで遠くの景色を見ていると、携帯のバイブが鳴った。
跡部からのメールだ。
めいこ「あ、ぶちょーが『今どの辺りだ?』だって」
日吉「お前、部長とメールしてんのか」
めいこ「うん、まぁ、色々あって、ははっ」
日吉「今###駅を過ぎたところだ。あと数分で最寄り駅に付く」
めいこ「おっけー」
メールを打ってさっそく返信した。