第1章 脳天気マネージャー(跡部)
衝動を抑えきれず扉を勢いよく開け、左手を構えて叫んだ。
めいこ「跡部王国(アトベキングダム)!!」
扉を開けた目の前には、ずぶ濡れの姿で張本人の跡部が呆然とした顔で立っていた。
めいこ「むわーーっ!!!」
跡部と目があっためいこは驚きと恥ずかしさで、左手キメポーズのまま勢いよく後ろに下がる。
キングダムの「ム」の直後に叫んだので変な奇声となった。
また一段と強さを増したヒョウはバラバラと跳ねて部屋に勢いよく入り、その1つがツッコミを代弁したかのようにめいこの脇腹に直撃した。
めいこ「あいてっ!」
一瞬動きが止まってしまった跡部は、急いで中に入りドアを閉めた。
めいこに当たった丸いそれは床で真っ二つに割れていたが、どう見ても拳大はあるのであった。
「どうりで痛かった訳だ」と妙に納得した。
頭上ではクツクツと笑いを噛み殺すような声が聞こえる。
恥ずかしくて顔が上げられない。
跡部「何やってんだ、お前は」
ため息混じりに言うと、跡部はめいこに手を伸ばし、シャツをまくり上げた。
めいこ「ふぇっ?」
冷たい手で脇腹をするりと撫でられ、体がビクッと反応する。
跡部「今当たったのココか?」
笑いを噛み殺しながら聞いてくるので、面白がってると悟る。
ハの字眉毛になりながら「うーっうーっ」という抗議のような言葉しかてこ出ない。
跡部はパッと離れると、水が滴る髪をかき上げた。
めいこは不覚にもドキッとしてしまう。
跡部「何か拭くものをくれるか、あと湿布だ」
めいこ「あ、はいっ」
バタバタと日品棚に走っていく。
テンパり過ぎて物を落としまくったが、やっとタオルと湿布を掴む。
「もー!女たらしー!」と心の中で叫び、くるりと振り返った左肩にはかがんだ跡部の顔があった。
めいこ「わーーーっ!!!」
また勢いよく後ろに下がると、後頭部を棚にぶつけた。
跡部はとうとう腹を抱えて笑いだした。
跡部「ビビり過ぎだろーが」
そう言いながらめいこからタオルを受け取ると、自分の頭を拭き始めた。
めいこ「もー!もーやめてくださいビックリする!」
跡部「悪い悪い」
跡部が背を向けて歩きだすと、めいこはちょっと口を尖らせた。