第34章 宿題もおやつに入りますか?
宍戸「あたりめーだろ!さすがに隣接してる遊園地へ行ったりはしねーだろ」
皆、無言になった。
会場を早足で移動していると暑くなってきた。
上に羽織っていたワイシャツを脱ぎ、腰に巻く。
ジンベエザメがいる水槽へ着く頃には、既にかなりの人だかりが出来ていた。
めいこ「うわ〜!でかー!」
大型水槽で優雅に泳ぐジンベエザメが、人集りの隙間から辛うじて見えた。
マジで辛うじて。
遅かったか!全然見えないに等しい!
せめて携帯で遊泳の写真を撮ろうと、ポケットに手を入れる。
無い。
反対のポケットにも手を入れてみたが、無い。
カバンも入念に確認し、足元を探してみても、それらしきものは無かった。
めいこ「え、うそ…」
サーッと青ざめていると、肩をグッと後ろから掴まれた。
まさか誰か拾ってくれた?!と瞬時に思ったのだが、イカつい外見のその人を見て、また青ざめた。
茶褐色肌に、いわゆる昔のヤンキーの髪型、確かリーゼントっていうやつで、細い眼鏡をかけている。
服は派手なハワイアン柄みたいなワイシャツ。
「おや、失礼。人違いでした」
口を開くと案外柔らかい物腰で、拍子抜けする。
「その、キミの着ているシャツが妹と同じだったもので」
えっ!この蓄光ジンベエザメシャツですか?!
その人は申し訳なさそうな顔をして、「では」と去っていく。
めいこ「あっ」
めいこはとっさに、彼の服を掴んだ。
「何か?」
めいこ「もしかして妹さん、迷子なんですか?」
「えぇ、お恥ずかしながら」
めいこ「一緒に探しましょうか?」
彼は、少し驚いた顔をした。
めいこ「実は、私携帯を落としてしまって…もし見かけたら、教えてもらえると嬉しいんですが…えぇっと、」
言葉を上手くまとめないまま喋ってしまい、しどろもどろになってしまう。
「なるほど、分かりました。では、一緒に探しましょうか」
めいこ「えっ!良いんですか?!ありがとうございます!」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
めいこ「あの、でもさっそく申し訳ないんですが…ジンベエザメの遊泳ショー観てからでも、良いですか?」
カカーッと顔が赤くなる。
「ダメですよ。スマホは落ちていても、一瞬で盗まれます」