第34章 宿題もおやつに入りますか?
長文英語を穴が空くほど眺めれば、なにやら変な絵に見えてくるというのはよくあること。
先程から分からない単語を片っ端から電子辞書で引いて訳そうとしているのだが、さっぱりである。
ただの呪文だ、これは。
比べたことはないが、氷帝の夏休みの宿題はハードな方だと思う。
宍戸「わかんねぇ、終わる気がしねぇ…」
向かいに座った宍戸が、イヤフォンを抑え込みながら机に額をつけた。
スピードリスニング問題を解こうとして、詰まっているようだ。
めいこ「そんなに?!」
来年の今頃はその問題を解くのかと思うと憂鬱である。
宍戸「早すぎて俺には聴き取れねぇよ」
ホラ、と、めいこにイヤフォンの片方を渡した。
めいこ「リアリィ?ミィトゥ!って言った!」
宍戸「ごめん、さすがにそれは俺でも分かった」
めいこ「なんだよもう!」
2人同時にため息をつき、楕円型の窓に視線を向ければ、入道雲の上に乗っかって走っているようだった。
滝「ほーらお2人さん、飛行機で沖縄なんてあっという間だよ?」
通路向かいのソファーに座った滝は、クスクスと笑いながら爪磨きをしている。
めいこ「そーだけどわかんないんだもん!!オッケー滝様!」
滝「やだよ、僕はゆっくりしたいもの」
指先から視線を外さない滝に、ガクッと肩を落とす。
向日「はいウーノーー!!」
宍戸の後ろでは、宿題終わった組のウノ大会が盛り上がっていた。
芥川はなんと、残りの宿題を家に置いてきてしまったらしく、開き直ってウノに参加している。
跡部「ったく、7月中に終わらせりゃ良かったものを」
跡部は奥のキッチンから、優雅にグラスを持ちながら歩いてきた。
当たり前だけど、中学生なのでソフトドリンクなんだろうな。
なんか、可愛いな。
大会出場がこの間決まり、結束力を上げるために旅行なんかどうだろうかと、跡部にめいこが提案したのだが、それまでに全ての宿題を終わらせてからという条件の元、許可が降りた。
もし終わらなかった場合は、旅行中にやること、ということで、今に至る。
勿論、一般飛行機で行くものだと思っていたのだが、さすが跡部様というべきか、なんとプライベートジェットを出してくれたのである。
まあ、それも満喫できぬまま降機することになりそうだけれど。