第29章 付いてくならトコトン(跡部/千石)
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数日後の朝、めいこと跡部は自家用車内で、小さな口論をしていた。
めいこ「だーかーらー、駄目ですって!」
跡部「何が駄目なんだ、悪い虫がつかなくなってちょうどいいじゃねーか」
めいこ「よくないです!そもそも誰も寄って来ないし!」
跡部「来てるだろ。お前が鈍いからなおさら心配だ」
めいこ「鈍っ!!そ、そんなことないっすよ!電波ビンビンスよ!」
跡部「どこがだ」
めいこ「とにかく!うちらが付き合ってるとか、そういうのは秘密にして下さいよ!皆も私も気を使って、部活やりづらくなったら困りますもん!…ぶちょー?聞いてます?」
跡部「……」
跡部はため息を吐きながら、窓の外を眺めている。
思いが通じ合ったあの後、夕方だったこともあり跡部に車で送ってもらった
めいこだったが、跡部が別れ間際に、今度の部活で交際宣言をすると言い出したのだ。
あの200人以上いる部活でそんな公開処刑みたいなことしてどうする!と思うめいこと、意見が食い違っている。
めいこ「ぶちょー?」
跡部「……」
めいこ「跡部せんぱーい」
跡部「……」
めいこ「……けごたん」
跡部「!?」
目を丸くして振り返った跡部に、めいこはプッと吹き出した。
めいこ「あ、ミカエルさん、ここら辺で大丈夫です!」
学校付近の赤信号で、めいこは車から降りる準備をする。
跡部「オイ、一緒に登校くらいはいいじゃねーか」
めいこ「いやバレますって!2人だし。じゃあぶちょー、また後で!」
ミカエルさんにお礼を言うと、めいこは車から素早く降り、辺りを確認していた。
跡部「ったく、よっぽどそういう方が勘付かれんじゃねーの?」
腑に落ちない跡部が、窓越しに投げキッスをすると、めいこは真っ赤になりながら、エアーラケットでスマッシュを打ち返したのだった。
そもそも別々で登校したかったのには、もう1つ訳がある。
跡部のサプライズを準備するためだ。
普段はまず、テニス部マネージャー準備室へ行くのだが、今日は教室等へ向かった。
夏休み中、生徒がまばらだった廊下はかなりの人数で溢れかえり、皆、テニスコートを上から覗き込んでいる。