第26章 レポート書いてたはずです(財前/跡部)
跡部にカブトムシのことを話すと、とりあえず持ってこいと言われた。
外来種の場合、ウンタラカンタラと色々問題があるらしい。
迎えの車が来るまで、財前とそのままブラブラ近所を歩くことにしたが、そろそろお腹も空いてきた。
めいこ「おやつに、歩きながらカツでも食べる?」
財前「お、ええな」
めいこ「駅前にすっごい美味しいお肉屋さんがあるんだー、激安だし」
財前「へぇ」
遊歩道脇の橋を渡り、駅前に戻っていく。
おやつ時なのもあって、揚げたばかりの香ばしい狐色のカツが並ぶ。
2人はめいこオススメのチキンカツを買うと、紙に包まれた包装を丁寧に剥がし、店の脇でさっそく食べ始めた。
1口目にバリッと軽い音がして、柔らかい肉の中から、じんわりと温かな汁が染み出してくる。
財前「はぁー、うんま」
めいこ「でしょー?」
めいこは誇らしげな顔をして、カツを頬張る。
財前「コンビニよりデカくて安くてウマいやん」
めいこ「ほうなの。だから、直ぐ売り切れちゃうんだー」
口いっぱいに頬張る幸せそうなめいこを見て、財前は顔を綻ばせた。
財前「衣、めっちゃついてんで」
めいこ「へ、ふほ」
慌ててゴシゴシ口元を擦っている。
それすらも可愛いと思ってしまうことに、財前は気づいた。
あー、マジか。
まさかこの短時間でと、自分の気持ちの変化に戸惑い、意味もなく頭をガシガシとかいた。
しばらくして、待ち合わせの駅前付近に黒光りの車が止まった。
前回同様、お迎えのものは幾分小ぶりだ。
運転手はめいこの顔が分かるミカエルだったので、直ぐにドアが空いた。
めいこ「こんにちは、よろしくおねがいします」
めいこは会釈して車に乗り込むが、財前は目を点にして立ち尽くしていた。
財前「お...俺はここで...ええわ」
めいこ「あ、用事?」
財前「いや...」
「ご予定が無ければお連れ様もご一緒にと、景吾様から申し使っております。」
めいこ「だって!」
財前「え、えぇぇええ」
めいこに引っ張りこまれ、財前も跡部宅に強制連行されたのである。