第26章 レポート書いてたはずです(財前/跡部)
めいこは今、職業体験のレポートを書いている。
跡部に完璧なレポートを提出するよう言われたので、記憶が薄まらない内に終わらせておこうと思ったのだ。
心地よい音楽と、店中にコーヒーの香ばしさが漂う。
めいこはまだそんなに飲めないが、嗅がずにはいられない。
各席には程よい高さの壁が設けてあり、隣を気にせず作業するには持ってこいの場所だ。
けれど店全体が木材でできているため圧迫感もなく、温かみがある。
ソファはフカフカだがあまり沈み込み過ぎず、丁度いい。
ここは関西方面に展開しているチェーンの喫茶店。
あっち方面を旅行した時にたまたま入ったのだが、モーニングサービスとして1ドリンクにつき、フワカリトーストとゆで卵がついてくる。
そして勿論、飲み物もどれも美味しい。
以来すっかり虜になってしまい、最近関東方面にできたこの店にもよく通っている。
めいこはホットハニーミルクをグビリと飲んだ。
そこそこ進んだので、一度休憩をとろうと、入り口付近に置いてある雑誌を取りに立ち上がる。
いくつかある中に、丁度千石先輩(番外参照)オススメのものが置いてあったので、それに決めた。
なんでも心理学や占いのコーナーが面白くて、よく当たるらしい。
パラパラと読んでいく内に、4秒以上相手を見つめると、好意を抱かれていると思わせることができる、という記事が目に止まった。
面白そうなので、試しにまずは一番遠くの席で背中を向けているお姉さんに、ジッと視線を送ってみることにした。
ら、4秒も待たずに思い切り後ろを振り返ってきたので、慌てて目をそらす。
今度は斜め向かいに座る少年を見つめる。
頬杖を付きながらスマホをいじっているので、なかなか気づきにくいのではないだろうか。
4秒以上視線を送っても反応が無かったので、一度目線を外した。
今度は目力入れてみようかな、ガンつけだと思われない程度に。
どんくらいで気づくか試してみようかな。
先程の少年に再び視線を向ける。
いやしかし、休憩中に一体何をやっているのか。
そう思いつつも、妙に楽しくなってきた。
6秒くらいしたところで、相手が席を立つ素振りを見せたので、視線を手元にうつす。
あの少年にはあまり効果がなかったようだ。
もう一口ミルクを飲むと、向かいの席になんとその少年がドカリと座った。
