第25章 【過去】ミケニャンニャンの日にて(千石)
どうやら撫でていた手が止まったのが不満だったらしい。
めいこは頭がフワフワと浮いたような気持ちで、一緒に猫を撫でていた。
猫カフェも十分に満喫し、そろそろ最寄り駅に着こうかという時、千石が「あ」と声をもらした。
ズボンのポケットを触り、少し焦った表情を見せる。
千石「あ....アハハー」
千石は「参ったなー」と頭の後ろに手を当てながら、視線を落として辺りを見渡した。
めいこ「どうしたんですか?」
千石「いやー、ごめんねぇー、俺スマホ落としちゃったみたい」
めいこ「えっ!アレを?!」
千石「アレを。アハハハ、面目ない」
スマホよりも重く、たわわに実るかのように付いていたキーホルダー達。
おまけに走ればジャラジャラと派手な音がするし、無くなったら直ぐに気づきそうなものだ。
キーホルダーが重すぎて、スルッとポケットから落ちてしまったのだろうか。
いやしかし、そうだとしても、そうだったとしたら、派手な落下音がするはずである。
めいこ「あたしも気づかなかったなぁ...」
千石「ほんとごめんねー。もう少し一緒に居たかったけど、ちょっと探しに戻るから、ここでお別れかな」
千石は残念そうに、めいこから少し距離を置いた。
めいこ「ん?あたしも探しますよ?」
千石「え?」
めいこ「2人で探した方が早く見つかるかもしれませんし。それにスマホって、誰かに拾われちゃうと速攻で売却されちゃうんですよね?一緒に探しましょ!」
千石「めいこチャンありがとぉおお!」
千石は勢い余ってめいこに抱きついた。
めいこ「グフッ」
千石「ハッ!またやっちゃったごめん!」
めいこ「い、いえ...」
慌てて身体を離すと、めいこの少し先を足早に歩き始めた。
千石「しっかし、どこで落としたのかなー」
めいこ「落下音も分からなかったから、柔らかいところに落ちたか、もしくはどっかに置いてきちゃったとかですかね」
千石「んー、そうかもー」
注意深く視線を落としながら、駅前から商店街を歩いていく。
道すがら交番に届け出が有るか聞いてみたのだが、無かった。
めいこ「無いですね〜」
千石「そうだねぇ〜、うううん、携帯止めといた方がいいかな?」