第25章 【過去】ミケニャンニャンの日にて(千石)
ラケットのネットに弾むボールの音と振動が心地良い。
自然と顔が綻んだ。
千石「よーっし、そろそろ移動しようかー」
めいこ「っはい」
めいこの息は少し弾んでいたが、千石は頬がいくらか赤くなっただけで、悠々とラケットを仕舞い始めていた。
前回の期待を裏切らない、メルヘンで小さなお城のような猫カフェは、3月22日に因んで三毛猫ショーをやっていた。
普段は交代のところを三毛猫フルメンバーが店に出ており、その後も庭やらお城やらの敷地内で、自由気ままにくつろいでいる姿があちこちで見られた。
めいこ「三毛猫ちゃんってこう見ると、初心者でも模様の個性で区別が付きやすいですね」
千石「あー確かにそうかも、どの子もかわいいよねー」
千石は庭にしゃがみながら、日向で寝そべり、うっとり、こんがり焼けている三毛猫を愛でていた。
めいこ「千石せ...キヨ先輩って、ほんとにどの猫ちゃんも大好きなんですね」
隣で一緒にしゃがみながら猫を撫でる。
千石「だって選べないじゃない、皆かわいいんだもん。模様もそうだけど、性格だって個性があるし」
めいこ「なるほどー、だから女子にもそんな感じなんですね」
千石「っえ?!」
驚いて振り向いた千石は良き方向に転ぶよう、物凄い速さで頭を回し始めていた。
めいこ「あ、良い意味ですよ?その、どの子の良さも見つけられるって事じゃないですか。それって、すごいなーと思って」
千石「え?あぁ、うううん..ゴホンッ」
これではめいこチャンもその他大勢だと思われてしまう!!
千石は褒められた気持ちもしないまま、打開策を考える。
千石「でもさ、その...もっとその子のいいとこ知りたいって思うのは、1人だけなんだよ」
めいこ「へぇー!実は一途というやつですか!いやーそういうの女子弱いですよ〜?あははは!」
千石「じゃあ、その弱いところを突こうか」
めいこ「ん?」
先程とは違い、真っ直ぐ真剣な顔でめいこを見つめる。
千石「もっと知りたい1人って、めいこチャンなんだけど」
めいこ「フェ....」
千石「...」
「ナァーン」
目の前に寝そべっていた三毛猫が、千石の腕を甘噛みした。
千石「あぁあ、ごめんよー。いい子いい子」